2021-04-20 UP!

時習サロン「うどん粉屋のうどんの話」

写真1

2月20日(土)に、時習サロン「うどん粉屋のうどんの話」が開催されました。今回は、時習29回卒業生である志賀重介君(写真1)を講師に招いて、愛知の食文化であるうどん・きしめんを支えるうどん粉について、熱く語って頂きました。

当初予定では、今回のサロンは、東京神田神保町の学士会館(国の有形文化財に指定されている由緒ある建物)を会場にして開催する予定でしたが、コロナ禍の拡大に伴って、1月7日に緊急事態宣言が再度発令された事態を憂慮し、急遽、Zoomによるリモート開催に切り替える事としました。東京八重洲の会議施設に講師とスタッフが集結して、講演をライブ配信するという試みです(写真2)。
ただ、今でこそ言えますが、サロン直前の2月13日に福島を震源とした震度6強の地震が発生した影響で、講師・スタッフの移動や機材の運搬に支障が出かねず、一時はZoomでの開催も危ぶまれるという事態に陥りました。しかしながら、何としても成功させたいとするスタッフの熱い思いと奮闘により、何とか予定通り開催に漕ぎつける事ができました。その甲斐あって、51名ものZoom参加(そのうち愛知、静岡および大阪から16名)があり、会場側(=八重洲基地局)スタッフと合わせると計62名の皆様に今回のサロンに参加頂けました。幹事一同、改めて厚く御礼申し上げます。
前置きが長くなりましたが、ここで改めて講師の志賀重介を紹介させて頂きます。

写真2

志賀君は、現在「株式会社金トビ志賀」の代表取締役社長を務めておられます。
(株)金トビ志賀のルーツは、大正6年8月に志賀八五郎氏が蒲郡で創業した製粉製麺業にあります。以来104年の長きにわたり、麺用粉専門の製粉会社として全国のうどん文化を支えてきた、うどん粉屋さんの老舗中の老舗です。志賀君は、その祖業を脈々と受け継ぎながら、ブランド小麦である愛知県産きぬあかりを武器に、「味噌煮込みうどん」やアサリを入れた「ガマゴリうどん」の普及に努める一方、きしめんの復活にも尽力され、国内ではうどんサミットをリード、また香港Food Expoにきしめんを出展するなど、日本のみならず、世界を飛び回って日本のうどん文化を広めておられます。
今回のサロンでは、伝統業の紹介に留まらず、業界の抱える課題や、うどんの将来を見据えた志賀君の昨今の精力的な活動まで幅広く講演頂きました。実に興味深く面白い内容で、あっという間に時間が経ってしまった、そんな感じでした。まさに“Great Job!!”でした。
ではここで、志賀君の講演の概要を、ハイライトさせて頂きます。
【株式会社金トビ志賀】
志賀製粉所と金トビ食品(販売会社)が合併してできた会社。祖業はうどん粉屋で、大正6年に蒲郡で操業を開始。現在は製麺も手掛けており、創業の地である蒲郡丸山町を含めて愛知県内に5か所の事業所を保有。従業員60名、年商は約7億5千万円。
【日本の製粉業】
① そもそも製粉とは、小麦から外皮(13.5%)と胚芽(2.5%)と胚乳(84%)を取り分ける仕事。理論上は84%にあたる胚乳が粉になるわけだが、実際にはその割合は上級粉でも60%程度。
② 国内産小麦は、農林61号、イワイノダイチ、きぬあかり、きたほなみ等に代表される。ただ、国内産小麦だけでは需要を賄えず、外国産小麦を輸入して、国内消費の90%を賄っているのが実情。国内産小麦生産量は年間約80万トンに対して輸入小麦は年間約550万トン。
③ 世界の小麦事情
生産国ランキングでは、1位:中国、2位:インド、3位:ロシア
※世界の生産は7億5千万トン、日本の生産は85万トン。
輸出国ランキングでは、1位:ロシア、2位:アメリカ、3位:カナダ
輸入国ランキングでは、1位:エジプト、2位:インドネシア、3位:アルジェリア
※日本の輸入量は年間550万トンで6-7位。うちアメリカ産パン用小麦が最も多い。
④ 日本の製粉業界
国内製粉会社は終戦直後には約2,000社あったが、現在は約70社。うち大手4社、中堅9社は不変で、減少したのは、中小・零細の製粉会社。一方、大手と中堅で全生産量の90%近くを占めている。
【地方製粉業の役割】
近年、地方における小麦の育種が盛んになり、良い小麦、特にうどん用の良い小麦が取れる様になって来た。地域毎の食文化に則した品種改良が行われ、ここ10年で商品化が進んでいる。愛知県、静岡県で取れる「きぬあかり」はその好例であるが、これら国産小麦は、従来の外国産小麦にとって代わる物として期待されている。
【うどんの食感をかたち作るもの】
小麦粉の主要な成分は、たんぱく質とデンプン。たんぱく質はうどんの弾性と粘性を作り上げ、デンプンが、もちもち感に影響を与えている。愛知県産のきぬあかりは、これら成分のバランス的にうどんに適した小麦だと言われている。

終章として、愛知のうどん文化を支える味噌煮込みうどん、きしめん、にかけうどんについて語ってもらいました。この中で、「味噌煮込みうどん」の2つの老舗である山本屋総本家と山本屋本店について、また「きしめん」の老舗である吉田きしめん、宮きしめん、 きしめん亭エスカ店について各々その系譜を紹介してもらいました。きしめんに関しては、新幹線ホームの立ち食いきしめんに関する豆知識も披露頂き、きしめんファンにとっては“納得!!”の情報でした。
うどん、きしめんのますますの普及に向けて、近年様々な取り組みがなされています。豊橋の新名物として豊橋カレーうどんが企画・開発され、約10年前から販売されています。また蒲郡の新名物として、アサリのうどん、ガマゴリうどんが企画・開発され商品化されました。
地域おこしの一環として、10年前の2011年に「全国ご当地うどんサミット」が企画され、第一回が滋賀県東近江市で開催されました。この取り組みは現在も続けられており、

写真3

今年は蒲郡で開催される予定です。この間、ガマゴリうどん(写真3)は3度グランプリの栄誉に輝いています。蒲郡市は街を上げてこの取り組みを支援しており、志賀君もその牽引役として活躍されています。志賀君をはじめ、業界や地域関係者の皆さんが、うどん・きしめん文化の普及の為に、まさに草の根運動的な取り組みをずっと続けておられる事を知り、素直に感心するとともに、自然と“頑張って!!”と心の中で呟いたのは私だけでしょうか。
彼らの応援に繋がると信じ、皆さん、今日も明日もうどん、きしめんを食べましょう。

最後に、講演中に志賀君が囁いたひとことを付記して筆をおきます。曰く、「どんなにおいしいうどん粉で製麺された麺でも、ゆで方が悪いとおいしくない。」

(時習サロン 29回生幹事一同)



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