2月18日(土)、時習サロンが開催されました。

講師・伊藤和史氏
今回は時習31回卒業生の毎日新聞学芸部・伊藤和史記者を講師に招き、歴史(考古学)、民俗学を対象とした豊富な取材経験の中から、論理で説明不能な数々の「不思議」との出合いについて、濃密に、味わい深く語ってもらいました。
今回のサロンは、21年1月以来久々に懇親会を実施、本来の姿に立ち戻ることができました。
講演会場は、前回と同じ新御茶ノ水の連合会館内401会議室。45名の皆様にご参加いただきました。新型コロナ・インフル同時流行という逆風の中、ご協力いただきましたことに幹事一同御礼申し上げます。
講師の伊藤和史さんは、79年時習館高校、83年早稲田大学政治経済学部を卒業、毎日新聞社入社。東京本社学芸部。主に考古学、古代史、文化財等を担当。日曜版で今回のテーマにも関連する「聖地巡り」の記事も手がけました。現在、毎日新聞夕刊にコラム「今どきの歴史」を月1回連載中です。
以下、当日の講演を要約いたします。
07年、取材で赴いた熊野古道・小判地蔵近くで体験した突然の体調不良。のち、行き倒れた巡礼(ダル)の祟りがあるという説があると知る。これが「不思議」探求の契機に。
13年、60年ぶりの出雲大社遷宮取材。「八雲立つ〜」(須佐之男命の歌にある表現、出雲の枕詞)そのままの気象現象(西洋でいう「天使のはしご」)を目撃。5月10日の遷宮当日、遷座祭中はそれまで降っていた雨がぴたりと止み、儀式終了直後風が吹き、一転土砂降りに。これが大国主神の御神徳か? と参集した衆人がどよめき感じ入る。
こちらも13年、伊勢神宮の第62回遷宮取材経験から。外宮の前の「三つ石」(お祓いをする場所。手をかざすと熱を感ずるパワースポット)のぬくもりを体感する。ここでも祭祀の際、御神体が遷るときは「風が吹いた」という。元伊勢内宮(京都・福知山)では古来のままの社や木々に出合う。古代人が神聖視した冬至の日(一陽来復の日)に太陽が昇る向きに日室ヶ岳〜元伊勢〜伊勢が並ぶ「聖なるライン」があるとされる。
柳田國男の『遠野物語』はノンフィクション。単なる伝承というよりも100年前に生活の中で起きていたリアルで不思議な出来事の記録として読める。遠野に赴き、絶対揺れない「行灯森」=「不地震地」をたずね、マヨヒガ(迷い家。山中に出現する「幻の家」)のあるとされる山を望む。
最後に沖縄本島、宮古島へ向かい、そこに伝わる不思議な場・御嶽(ウタキ)を訪ねる。ウタキとは祭祀を行う施設、神が降臨する場所。宮古島・狩俣の祭り(ウヤガン=祖先願い。現在中断している)の様子をきく。神役の女性たち(ツカサ=くじ引きで決められる)がおおいに活躍する。独特の奇妙な禁忌もある。また、カンカカリャ(「神懸かり」の訛か)別名「ユタ」が神役とは別にいる。彼らは特異な経験を経て神と交信する役をつとめ、地域社会で重んじられている。

当日の会場の様子
宮古島のような地域は日本列島のもつ多様性を示す意味で貴重だ。「不思議」に意味はあるのか、という問いには、「人間は人間だけでは生きていけない。人間には神が必要」という民俗学者・谷川健一の言葉を引用して応えたい。神に精神を委ね、エゴから離れようとする民俗の知恵をそこに見る。我欲から自由になることで社会が成り立つ。これを可能たらしめる精神の「領域」が必要になる。論理を逸脱した「不思議」な現象は人を謙虚にさせる。
──以上のような講演のあと、講演の中で出題された恒例のクイズの成績優秀者の方へ賞品を贈呈。今回賞品の「懐かしの味」は、豊橋の老舗「若松園」の各種銘菓などで、ご好評いただきました。
ここで記念写真を撮影の後、懇親会場「石庫門ソラシティ店」へ移動。2時間余り、世代を超えてなごやかな交流のひとときをすごしました。
今回が時習31回生の幹事担当サロンの最終回です。2年間に亘りご協力・ご指導いただきありがとうございました。
(時31回 松井 高志)
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